秋です。
ゲージュツです。
というわけで美術館へ行ってきました。
秋晴れの気持ちいい空に街路樹が美しい。
今回うん年振りに美術館へ足を運んだのは特別展に興味があったから。
フェルメールですよ。
フェルメールの『窓辺で手紙を読む女』は修復作業により、キューピットの絵が現れたことが大きな話題になっています。
『フェルメールと17世記オランダ絵画展』は7つのセクションに分かれていました。
<第一章 レイデンの画家ーザクセン選帝侯たちが愛した作品>
*ヘラルト・ダウ『老齢の教師』『歯医者』
A5くらいの小さな絵です。
細部まで緻密に描かれています。
緻密な描写は北方ルネサンスからの流れでしょうか。
*ピーテル・ファン・スリンゲラント『若い女に窓から鶏を差し出す老婆』
西洋絵画を鑑賞するときは、作品中に描かれた動物や植物の持つ意味を考えるとより理解が深まるそうです。
老婆が手にする鶏は男女関係の象徴。
気のせいか老婆の表情もいやらしい。
「いい男いまっせ、どうでっか一晩」と言っているように見えてしまう。
*ハプリエル・メツー『鳥売りの男』『鳥売りの女』
こちらも金が絡んだ男女の密事が読み取れます。
*ヘラルド・テル・ボルフ『手を洗う女』『白繻子のドレスを纏う女』
サテン生地の光沢や肌触りまで伝わってきそうな絵です。
手を洗うのは清純さの象徴で、犬は忠誠心の暗示しているんだとか。
展示されている他の絵にも犬が多く描かれていました。
<第二章 レンブラントとオランダの肖像画>
*レンブラント・ファン・レイン『若きサスキアの肖像』
このセクション1番の見所ではないでしょうか。
結婚する前の奥さんを描いた作品だそうです。
中学の時、美術の資料集でレンブラントの『夜警』を見て「ああ、なんてかっこいい絵なんだろう」と感動したものです。
でも、この肖像画を見ても「はあ、そうですか、上手ですね」としか感じませんでした。審美眼がなくてすいません。
スポットライトが当たったような光と影の表現はレンブラントらしい。
*バルトロ・メウス・ファン・デル・ヘルスト『緑のカーテンから顔を出す女』
布の質感、こちらを見つめるグリーンの瞳が美しい。
日常の一場面を切り取ったような構図も、女性の無防備な様子もいい。
<第三章 オランダの風景画>
美術館が薄暗いからなのか、そもそも17世記の絵は明るさがなかったのか、風景画も曇ってるなぁって思いました。
感想が貧相。
*ヤーコブ・ファン・ライスダール『城山の前の滝』
川が飛沫をあげて勢いよく流れている。
岩山の頂にある城に住むのは魔族の王かもしれません。
自然の雄大さを感じるとともに、何かが起こりそうな、不穏な空気を感じさせる絵です。
*ヤン・ファン・ホイエン『冬の川景色』
緻密な描写があるとか、光と影の対比があるとか、そういうものは感じません。
でもこの絵の「ちょっとぼんやりして派手さのない感じ」が好きです。
オランダの冬は川も凍るほど寒いのでしょう。
寒くて、曇り空で、気持ちが沈む人もいると思います。
しかし、この絵にいる人たちからは楽しい笑い声が聞こえてくるようです。
<第四章 聖書の登場人物と市井の人々>
*ヤン・ステーン『母子像』
昔は赤子をおくるみに包んで、クリオネみたいにしてたんかな。
赤子というよりも小太りのおっさん風なんだよなぁ。
山田五郎さんが、書籍かYouTubeで「西洋画の子供は可愛くない」と言っていました。
この絵も漏れずに子供があんまり可愛くない。
*ヤン・ステーン『ハガルの追放』
追放されるハガルの美しさと対照的に、室内にいる本妻の年老いた様子と母親に耳垢を撮ってもらう息子の、気の抜けた顔がなんとも醜く見えます。
昼ドラ顔負けのドロドロした人間模様。
これが聖書の一節とは驚きです。
*エフベルト・ファン・デル・プール『農家の恋人たち』
画面中央の人物二人の顔が、結構テキトーに描かれていて驚きです。
写実的な人物画を鑑賞した後だと10秒で描いたような顔でいいんかい、と思ってしまう。
逆に即興的な人物描写だからこそ、物が散乱する小屋の中で逢引する男女の短絡な快楽主義が伝わるのかもしれません。
<第五章 オランダの静物画ーコレクターが愛したアイテム>
*ヨセフ・デ・ブライ『ニシンを称える静物』
ニシンを称える詩を中心に、静物が配置された絵です。
「ニシンは二日酔いにも効く」と称えたおじさんは詩人で医者だったそうな。
中央に描かれたニシン、あんまり美味しそうじゃないなぁ思ってしまう私は俗物でやんす。
ニシンは日本でも身近な魚ですね。
民謡に出てきますし、ニシンの卵、数の子は正月料理に欠かせません。
身欠きニシンを煮物に使うところもあります。
世界一臭いことで有名なシュールストレミングもニシンですね。
*ヤン・デ・ヘーム『花瓶と果物』
花弁一枚一枚の艶やかな様子、光と影のバランス、花の良い香りが漂ってくるような絵です。
格式高い古い洋館の応接室に飾ってありそう。
とても美しく、好きな絵です。
第六章 複製版画
(とくに印象に残っているものがないので割愛)
17世紀のオランダ絵画を鑑賞し、いよいよ修復された『窓辺で手紙を読む女』とご対面です。
次回に続く。